見近島キャンプツーリングレポート
2025年5月28日(水)〜29日(木) 1泊2日
見近島(みちかじま)は、しまなみ海道の伯方島と大島の途中にある島で、無料のキャンプ場がある。ここに行くには原付バイク(125cc未満)か自転車か歩き(ほとんどいないとは思うが)しか方法がなく、特に原付バイクや自転車のキャンパーの人気が高い島である。
実はハンターカブの購入のきっかけとなった一つが、しまなみ海道は原付バイクなら高速は使えない代わりに、専用の道路を使って、本州から四国まで行けることを知ったからである。
今回のキャンプツーに備えて、4月6日に予行演習としてハンターカブで実際に見近島まで往復してきた。尾道を出て、先ず向島、次が因島、生口島、大三島、伯方島、そして見近島と続き、それぞれの島をつなぐ橋を渡る。橋には原付バイク、自転車、歩行者用の専用道があるが、難しいのはその入り口である。橋から近いところにあるが、離れたところにあることもあり、しかも自転車とバイクの入り口が別々になっているところもある。もちろん表示はあるのだが、うっかりすると見過ごしてしまうこともあった。橋の通行料金は50円が4か所、100円と200円が1か所ずつと、とても安い。四国まで往復してなんと500円。いちいち小銭を用意するのは面倒なので、あらかじめ原付チケットという回数券を買っておくと便利である。ちなみに自転車と歩行者は無料である。


<1日目>
ハンターカブで初めてのキャンプツー。どれくらい積載できるか不安だったが、前日にあれこれ工夫して準備万端! 先日買ったサイドボックスを付け、あとはほぼ北海道や九州ツーの装備と一緒である。普段使っている角型のボックスは容量不足なので、W800で使用している、でっかいツーリングボックスを利用。ただし、リアキャリアのフックの形状が悪くセッティングに苦労した。例えばサイドボックスはリアキャリアにベルトを通して固定しようと思ったのだが、そのスペースがなかったため、位置が少し下になった。ホンダさんよ、これは改良の余地があるぜよ(怒)

下見をしていたので、迷うことなく下道や橋をスイスイと渡って、13時過ぎには見近島に到着。平日だから空いてると思いきや、すでに8つほどテントが立っている。バイク、しかもカブ系が多いがチャリダー(自転車乗り)もいる。海辺りが山側か迷ったが、人の少ない桜並木の山側を選択。テントを設営していると、隣の男性が上を指さし、「木の下は毛虫が落ちてくるよ」と親切に教えてくれたので場所を少し移動して設営完了。


夕食の買出しに隣の大島に向かう。時間に余裕があったので、かねてから行ってみたかった珍しいスポットに行くことにした。それは、大島と今治を結ぶ来島海峡大橋の途中にある馬島である。何が珍しいかというと、馬島に降りるのにバイクごとエレベーターに乗れるのだ。これを一度体験してみたかった! 実際に乗ってみると何とも不思議な感覚。4階から1階へとバイクと共に海の景色を見ながら降りていくのは実に気持ちのいいものだった。


馬島にはホテルやグランピング施設があるらしいのだが、普通のキャンプ場はないのでパス。再びエレベーターに乗り、来島(くるしま)海峡大橋を渡って大島に引き返した。
夕方までにはまだまだ時間があるので、「村上海賊ミュージアム」というところに行った。因島にも「水軍城」という村上水軍に関する博物館があり、何度か行ったことがあるが、ここは初めてである。城を模した大きな建物で、展示も充実していた。目の前の小さな能島(のしま)という島に城を構えていて、他にも来島を加え、3つの村上水軍があって、瀬戸内海を永く支配していた大きな勢力のようだ。結構内容のある展示で1時間ほど勉強をした後、大島の中心部にあるスーパーで夕食の総菜や四国の地酒、焼酎を買って見近島に帰ってきた。

すると来たときより、キャンパーが増えだいぶ場所が埋まっていた。全部で20組くらいだろうか?先ほど毛虫の注意をしてくれた男性がやってきて、話しかけてきた。出雲市から90ccのカブで来た80歳くらいのMさんで、5年前から何度もここを利用しているベテランらしい。
話している途中、上半身裸でテントを設営しているチャリダーの2人組を見て、彼がそちらに行って何やら身振り手振りで話している様子。帰ってくると、2人は韓国人で、マナーをちゃんと守るようにと片言で注意してきたとのこと。凄い! まるで管理人のような立場でもあるのだ。実際三原に住んでいる本当の管理人とも親しい仲らしい。
このキャンプ場は無料で管理人も常駐していないため、ネット等で有名になるにつれ、マナーの悪いキャンパーも増えて、ゴミを捨てて帰ったり、芝生の上で直に焚き火をしたりすることもあったそうだ。そんなことを話すと、再び巡回(?)に出かけた。見ていると、あちこちのテントに行っていろんな人に話かけたり、バイクの話をしている。うーん、私にはできないことだ。
日も暮れかかり日中は天気が良かったが、雲が出てきてきれいな夕日は望めなかったが、酒宴開始。


しばらく今日一日を振り返りながら楽しく呑んでいると、なんとMさんがまたやってきた。バイクの話や今までしてきた旅の話、話好きらしく会話が止まらない。相手を立たせたまま、一人だけ呑んでいては申し訳ないので「一緒に呑みませんか?」と酒を勧めると、自分のテントから食べ物を持って来て、それから腰を落ち着けて大いに盛り上がった。80歳くらいだと思っていたら、私より下の71歳と聞いてびっくり、見る目がないなあ! 彼も私の方が年下だと思っていたらしい。婿養子の待遇のひどさに耐えかねて離婚し、それからはカブにトレーラーを付けて全国を自由に旅しているとのこと。
Mさんが凄いのはなるべく金をかけずに、工夫してカスタム化していることだ。(年金が少ないためらしい) 例えば一輪のトレーラーは自転車用のものを取り付けたり(以前は自転車でもツーリングをしていたそうだ)、サイドボックスのステーもホームセンターの部材で作ったとのこと。リヤカーを引っ張って旅をするために、それ用に特注していることなどなど。
8時前、すっかり暗くなった頃に自転車に乗った3人組の若い外国人女性達がやってきて、Mさんと私のテントの間に陣取った。普通ならすぐにテントを設営し、食事の用意にかかるのだが、彼女達は暗い中、何が楽しいのか立ったままでキャピキャピといつまでも話している。おそらくアメリカ人みたいだ。Mさんと笑い声を聞きながら、「箸が転んでも可笑しい年頃なんだろうね」 そのうち地べたに座り込んでヘッドライトの明かりで食事を始めたが、やはり何かを言っては笑い転げている。私たちは夜がふけて周りのテントの灯りが消え始めたので、お開きにした。気が付くと彼女たちはいつの間にかテントを張ってもぐり込んでいた。その後はいつもの定番で、ランタンの優しい炎を眺めながら家から持ってきたウィスキーで仕上げ。11時頃に就寝した。

<2日目>
昨夜は少し寒かったが、しっかり着込んで寝たので快適に眠ることができた。6時半に起きてテントを出ると、早々と出発の用意をしている人も何組かいる。キャンプをするといつも不思議に思うのだが、早寝、早起き、早出の人が多いことだ。下手をすると私が最後になることもある。もっとゆっくりすればいいのに、と思うがそれぞれ事情があるのだろう。
私は普段はゆっくりと過ごし、9時頃出発することが多いのだが、雨雲レーダーを見ると11時頃に雨が降るという予想なので、早めに出発することにした。今日は帰る途中でで3ヵ所立ち寄る計画にしている。いつものミルクティーを飲んだら片付けにかかり、7時半には撤収完了。朝食をとっていたMさんに挨拶する。「またどこかでお会いましょう」と言って、見近島を後にした。Mさんはこれから出雲に帰るということだが、トレーラー付きの非力なカブで中国山地を越えていくのは、さぞ大変なことだろうとお察しした。
さて、隣の伯方島に渡り、最初に向かったのは船折(ふねおり)瀬戸観潮展望台である。伯方島と鵜島の間の海峡は、鳴門と同じく潮流が速く渦潮が見られるらしい。名前の由来は、昔の木造船が渦に巻き込まれて、真っ二つに船が折れるほど潮流が激しかったからだそうだ。しかし、渦潮が見られるのは干潮と満潮の間で、時間帯が悪く残念ながら見ることは出来なかったが、潮流が早いのは分かった。


次に向かったのは同じ伯方島にある開山(ひらきやま)公園である。春には千本の桜が咲き誇り、瀬戸内海が一望できる人気の絶景スポットだが、さすがに今の時期は誰もいない。展望台に上がると標高が高いため、かなり遠くまで見渡せる。今回走った島や橋が全て見えるので、「あそこを走ってきたのか」と、しっかりおさらいをすることができた。来年は是非、桜の季節に訪れようと思う。
展望台から降りて駐車場に行くと、私のバイクの隣に同じ黄色のハンターカブが並んでいる。神奈川県から来たという大学生らしい若者がいて、しばしハンターカブ談議に。彼もキャンプをしていて荷物を積んでいたのだが、やはりリアキャリアの形状が不便だとこぼしていた。お互い、2台のバイクの写真を撮りあって別れた。


最後に行ったのは、なぜか伯方島ではなく、隣の大三島にある「伯方の塩」の工場である。入り口の横に鉄のパイプが吊り下げられていて、のど自慢の鐘のように金槌で叩くと例の「はっかったっのっしおっ」とメロディが流れるのが洒落ている。見学は無料で3種類の塩のお土産までいただいた。工場はとても大きく、大量の食塩ができる様子がよく分かった。しかし、塩の原料はメキシコとオーストラリアから輸入した天然塩で、それに瀬戸内海の塩水を加えて精製して作るそうだ。ちなみに大相撲で撒く塩も伯方の塩を使っていて、一日で35kg使うとか・・・。
工場を後にして、大三島から生口島、因島、向島と渡り、尾道へ。折角なら尾道ラーメンを食べようとラーメン屋を探すが、丁度昼時でどの店も観光客の行列ができている。すると一軒の店が空いているようなので、入ると客が誰もいない。小さなカフェ風の洒落た感じの店で、なぜかジャズが流れている。若い女性2人でやっていて、偏見を持ってはいけないのだが、少し嫌な予感がしつつ尾道ラーメンの並\850を注文した。出てきたラーメンは量は少なめだが、まあまあの味で安心した。その後、2時頃に帰宅。幸い雨に降られることもなく、楽しいキャンプツーを無事終えることができた。
