北海道ツーリングG

9月5日(月)〜7日(水) 【帯広→釧路→厚岸→霧多布→納沙布→別海町】
 <9/5(火)4日目> 帯広→大正→帯広→山花公園オートキャンプ場

 雨の音で目が覚める。ローソンに行って朝食を調達。雨雲レーダーを見ると、10時頃には雨が上がりそうだ。洗濯物がたまっていたのでコインランドリーを使っているとオーナーがやってきて挨拶した。

 雨が止んだので出発するが、すぐに小雨になった。上がることを信じて雨具は着けない。先ずは来るときに通過した「とかち大正二輪館」を目指す。しかし雨はだんだん激しくなったので雨具を着ける。そういえばVFRの人が雨具を着けるタイミングとして、道路が完全に濡れて、これから向かう先に雨雲がかかっていたら躊躇せず着る、とベテランらしく言っていた。

 この旧車バイクの博物館は、併設する燃料店の店主が若い頃、農家に石炭などを届けたときに納屋で眠っていた古いバイクを譲り受けてレストアし、現在170台くらいあるそうである。狭い建物の中にぎゅうぎゅうに詰め込んであり、あまり系統立ててはなかったが、旧車バイクが好きな私としては懐かしいバイクも沢山あり、結構楽しめた。他に客がいなかったので雨宿りのつもりで長居したが、一向に止む気配がないので諦めて出発する。

     

 昼食をとるために再び帯広に戻り、豚丼で有名な「とん田」を目指す。さすが人気店で駐車場は一杯である。しかし、嬉しいことに傘を持った店員がバイク専用の場所に誘導してくれた。店に入ると店の中に順番待ちの人が控えるスペースがあり、14,5人がいた。これはだいぶ待たされるかと思ったが、それ専門の店員がメニューを配り、名前を聞いてどんどん客をさばいている。回転が速いせいか15分程で中に入れた。メニューはロース、バラ、ヒレの3種類で私はバラ豚丼を頼んだがすぐに運ばれてきた。量もかなりあり、完食できるか心配だったが、とてもいい味付けでそんなにしつこくはなく美味しくいただいた。これで860円は安い。ただ、隣に座った中国系のカップルの男がクチャクチャと音を立てて食べるのには閉口した。しかし、日本人が海外に行って麺類をすすっていると、同じように思われるのだろう。

 再び合羽を着込み、道東自動車道や下道を通って浦幌の峠の店で休憩。雨はやっと小降りになった。ドリップで煎れたコーヒーが体にしみて美味しかった。不思議なことに普段コーヒーはほとんど飲まないが、旅に出るとなぜか飲みたくなる。天気が回復しそうなのでキャンプをすることにし、キャンプ場ガイドを見て釧路の北西にある「山花公園オートキャンプ場」に決める。

 道に迷いながら何とかたどり着くと今まで見たこともないような、広大でよく整備されたキャンプ場だった。(山花公園自体は東京ドーム170個分とか。温泉やホテル、動物園も併設している。)受付を済ますと場内を一周してトイレや炊事場に近く、いい場所にテントを張った。天気のせいか客もほとんどおらず、独り占めである。近くにコンビニはないが、少し離れたところに温泉があり、そこで酒や食べ物も売っているということなので温泉に入り、酒とつまみを買い、ついでに受付で薪を買った。やはりキャンプといえば焚き火である。酒宴を始めてしばらくすると暗くなり、ランプの光に何やら小さな動物らしきものが見えた。最初キツネかタヌキかと思ったが、よく見ると猫だった。

 なぜこんなところに?と思ったが、このトラ猫、私が食べているつまみを欲しそうにじっと見ている。しかし野良らしく警戒して近寄っては来ない。スルメを近くに放り投げるとがっついて食べている。だんだんと近くに来るように投げて、手が届くところまで来たとき、友情の印に頭をなでてやろうとして手を出したらいきなり指先をガブリと噛まれた。「この野郎!恩を仇で返しやがって!」と大声で怒鳴ると猫は逃げて行き、それきり来なかった。

その後、焚き火タイムとなり至福の夜を過ごした。

     

<9/6(水)5日目> 山花公園→釧路湿原→釧路市内→厚岸(あっけし)→筑紫(ちくし)恋(こい)キャンプ場

 起床すると最初曇っていたが、だんだん晴れてきてテントなどを乾かしながら撤収する。キャンプ泊の難点は、設営・撤収が面倒なことだ。特に朝、雨の中での撤収は大変で、天気予報と雨雲レーダーで確認してキャンプの可否を判断している。ゆっくりと片付け9時頃出発。

 今日のルートはこの近くにある釧路湿原を見て、釧路市内で昼食。泊まるのは厚岸の筑紫恋キャンプ場という予定。まずは釧路湿原展望台に向かう。TVなどで見る雄大な湿原を川が蛇行しカヌーを漕いでいる風景を期待したが、展望台に上ってみたら、ただの草原が広がっているだけで、少々がっかりした。遊歩道を歩くコースがいくつかあったが、疲れそうなので行くのは諦めた。長いことカヌーに乗っていないので、久しぶりにカヌーに乗る機会があるかと思ったがそれもなく、また次回に期待しよう。


 釧路はガイド本などで食べ物の名物の多いところだが、その中の「レストラン泉屋」の「スパカツ」を食べることにした。店の近くにバイクを止め、2階の店内に入ると、昭和テイスト満載のレストランで、3,4人のサラリーマンが椅子に座って順番を待っていた。いいなと思ったのが、自分の番が来て席に案内されると、すでにテーブルの上に水が置いてあったことだ。メニューをみるといろんな洋食があったが迷わずスパカツを注文した。しばらくして運ばれてきたスパカツを見て驚いた。熱々の鉄皿に大盛りのスパゲティとトンカツ、その上にあふれるほどのデミグラスソースがかかっている。口の中を火傷しないように食べていったが、さすがに最後まで食べきれず、カツを残してしまった。昨日の豚丼もそうだったが、北海道あるあるで食べ物の量が半端なく多い。


 レストランを出ると買い物をするためにホームセンターを探すことにした。ガソリンスタンドで聞くと、すぐそばにDCMというホームセンターがあった。雨具を着たり脱いだりしているときに革手袋を無くし(実は無くしてなく後から出てきた)、また持ってきた下着類や靴下が少なかったので買う必要があったのだ。手袋は気に入ったものがMサイズしかなく「ま、いいか」と買ったが、やはり窮屈で後で後悔した。人生妥協はダメだ。

 その後今日の宿泊地、厚岸の筑紫恋キャンプ場に向かう。内陸の国道ではなく、カッコいい名前の「北太平洋シーサイドライン」という海沿いの道を走る。くねくねとした1,5車線の道で残念ながら、あまり海は見えなかった。途中、道を間違えて尻羽岬に行く道を下っていくと、だんだん道が細くなり、しかも砂利道になったのでさすがにこれは違うと気付き引き返した。

 国道に合流すると厚岸湾が一望できる「厚岸望洋台」で休憩。すると根室から車で来ていた50代くらいの美人の女性に声をかけられた。バイクのナンバーを見て「福山ってどこにあるんですか?」「広島県の東で岡山の隣です。」この質問は旅の途中何度も受け、福山は全国的にはマイナーなんだなあと思った次第。でも会話のきっかけになるから、ま、いいか。


 しばらく話をした後、キャンプ場に行く途中「海事記念館」という建物があったので入ってみると、思いもよらない出会いが!

 海事に関する展示も興味深かったのだが、この町で発見された「アッケシソウ」という植物に関する展示があり、何か聞き覚えがあるなあと思いながら帰り際に職員の方に「アッケシソウは今見ることができますか?」と尋ねると「保護されている場所なので見られないのですが・・・。表の福山ナンバーのバイクの方ですか? 実は福山市のすぐ近くの岡山県浅口市寄島町に本州で唯一の自生地があり、アッケシソウを見ることができるんですよ」それを聞き、2,3年前に行ったことを思い出し、「そこに行ったことがあります!ここの厚岸が本家本元だったんですね。」と予想外の出会いに感動した。また、帰ってから、秋に浅口郡の群生地にも行ってみよう。ロビーには丁寧にも浅口市の保存会が作ったパンフレットが置いてあった。下の右は帰ってから10月30日に撮った寄島町のアッケシソウ群生地の写真。サンゴソウともいわれる小さな花が紅く染まりきれいだった。

   

 そこを出て厚岸湾に架かる橋を渡り、筑紫恋キャンプ場に行くと、なんとエゾシカが場内に十数頭ウロウロしているではないか。一瞬ここは鹿牧場かと思った。昨日がテントだったので、今日はバンガローに泊まることにした。食料を調達しにもう一度バイクで橋を渡り、日が暮れかかった頃キャンプ場に帰っていると、突然3頭のシカが目の前に飛び出してきて、危うくぶつかるところだった。鹿には注意しろと北海道に来てよく言われていたが、まさかこんな危険な遭遇があるとは。バンガローは小さいけれど快適でゆったりと休むことができた。

     

<9/7(木)6日目> 筑紫恋キャンプ場→厚岸→霧(きり)多布(たっぷ)岬→根室→納沙布岬→別海町ふれあい公園キャンプ場

 朝起きてバンガローを出ると気持ちの良い快晴だった。洗面後キャンプ場を散策した。昨日あれほどいた鹿は1頭もいない。出没の時間帯というものがあるのだろう。このキャンプ場は鹿の進入を防ぐためか、西部劇に出てくる騎兵隊の砦のように木の板でぐるりと板で塀を作っているが山の方にはそれがなく、そこから鹿が自由に入ってくるものと思われる。キャンピングカーが2台いて、そのうちの一人は長期滞在しているようで、朝早くから、ちりとりと火ばさみを持って鹿の糞を拾っていた。うーん、できた人だ。

   

 コインランドリーで洗濯と乾燥をし、9時頃出発。朝食はマップルに載っていた、厚岸駅前の「名物かき飯弁当」、またはすぐ近くの道の駅「厚岸グルメパーク(厚岸湾を眺めながら牡蠣グルメを堪能と記載)」のどちらかで食べようと橋を渡って行ったが、どちらもまだ朝早くて開店しておらず、ガッカリして引き返す。

 厚岸湖から霧多布に向かう途中に何か食べるところはあるだろうと走っていると、牡蠣の直売所や食堂がいくつかあり、その中の「かき丼」の幟が立っている店に入った。早速かき丼定食を注文すると、小さめの牡蠣が5,6個卵でとじた丼に大きいアサリの味噌汁が付いていた。牡蠣の味はというと、失礼だが瀬戸内海産とは比べものにならない。店の人に聞くと厚岸湖では一年中牡蠣が採れるそうで、それでは有り難みが少ないなあと思った。


 その後、霧多布岬に。とても景色の美しいところだったが、マップルで見ると最近亡くなったムツゴロウさんが、最初に動物王国を作った嶮暮帰島がすぐ近くにあった。現在は無人島だそうだ。

 駐車場で隣に止まった大宮ナンバーのBMWのオフロードに乗った30代の男性と話し、一緒に先端まで歩いて行くことにした。1kmくらい距離がありそうなので、いつものようにタンクバッグを持って行ったつもりだったのだが・・・。この後、大パニックに、というかいつものうっかり八兵衛。

 霧多布岬の灯台や、先端の看板があるところでお互い写真を取り合ったりして、引き返した。途中、北海道大学の学生がラッコの調査・観察をしていて、アンケートを書いてくれと言う。連れは応じたが、私は面倒くさいので、先に行くと言って駐車場に向かった。駐車場まであと少しというところで、手にタンクバッグが無いことに気づいた。中にはカードや免許証の入った財布があり、真っ青になった。おそらく岬のどこかで写真を撮ったときに置き忘れたのだと思い、大急ぎで走って引き返した。途中、連れはまだアンケートを書いていて、「バッグを忘れたので取って来ます」と言って、先端まで走って行ったがバッグは無かった。あたり一帯を探したが見つからず、無くなっていたらどうしようと、不安に押しつぶされそうになりながら駐車場に戻ると、何とシートの上にバッグは無造作に置かれているではないか。中を調べると何も取られてはいない。連れとの話に気を取られてカメラと携帯だけをバッグから出し、岬に向かったのだ。しかし、往復約4kmのランニングははきつかった。駐車場には人も大勢いたのだが、つくづく日本は安全な国だなあと実感した。

       

 連れと別れ、続いて根室半島の日本最東端の納沙布(のさっぷ)岬へ。北方領土資料館に入ると「日本本土四極最東端到達」の証明書をもらう。最北端は昨年行ったので、残りの2つも制覇しなくては! 北方領土返還の署名をして外に出ると、岬はどこも風が強いのだが中でもここが最強で、バイクが風で倒れないか心配になるほどだった。近くにいたライダーに写真を撮ってもらう

     

 その後今日のキャンプ地、別海町のふれあいキャンプ場を目指す。ここは珍しく町中にあるキャンプ場でナビですぐ見つかるかと思ったが、なぜか見つからず歩いている高校生に聞いたり、郵便配達の人に聞いたりしてやっとたどり着いた。入り口にも看板がなく、本当に分かりにくかった。ライダーおすすめの、元はパットゴルフの跡地のバイク専用サイトというのもあったが、結構密集していたので、空いている普通のオートサイトでテントを張った。近くに温泉があり、入ってみると茶色でヌルヌルした北海道に多い「モール泉」というお湯だった。入浴後、受付の支配人らしき人に「モール泉というのはどんなものですか?」と聞くと、「えーと、よく分からないんで・・・。あ、あそこに説明があるので読んでください。」なんのこっちゃ! それを読むと、葦などの植物が蓄積して亜炭(ドイツ語でモール)となり、そこを通った温泉がモール泉となったらしい。

 帰りにコンビニで酒とつまみを買い、酒宴。結構人が多くてにぎやかだったけれど、キャンプ場あるあるで9時を過ぎると静まりかえり、安らかに一日を終えた。