北海道ツーリングI 

9月12日(火)〜14日(木) 【川湯温泉→摩周湖→屈斜路湖→和琴半島→美幌峠→RECAMP摩周→釧路→帯広→大樹→旅うたり→浦河→日高→苫小牧→追分→旅の轍 】
<9/12(火)11日目>川湯温泉→摩周湖→屈斜路湖→和琴(わこと)半島→美幌峠→RECAMP摩


 朝6時頃、物音で目が覚めると若者が出発の用意をしていた。そういえば昨夜の宴会の時、彼が
「明日は1日で580km走ります」と言い、皆で「若いねえ」と言ったのを思い出した。

 早朝の温泉街を歩いていると土産物屋が多く、どこの店も決まったように、熊の油や爪、鹿の角
などを売っている。こんなもの誰が買うのだろうか?


 セコマで朝食を買い、同室のもう一人と一緒に食べた。そういえば他にも男性の宿泊者が2,3人い
たようだが、ほとんど顔を合わせていない。一体どこで何をしていたんだろう?


 今にも降りそうな中、オーナーと笠岡女子の見送りを受けて出発した。摩周湖に向けて走ってい
るとだんだんと霧が出てきた。そのうち雨も降ってきたので雨具を着け、「♪霧〜に、抱かれて〜、
し〜ずかに眠〜る♪」と布施明の「霧の摩周湖」(たしか私が中学生の頃流行った歌)を歌っている
と、そのせいかますます霧が濃くなり、10m先も見えないような状態。ヒヤヒヤしながらやっとの事で
第1展望台に着いたが、当然のことながら真っ白な世界で何も見えない。早々に引き上げ摩周の
町に下りると嘘のように天候は回復し、屈斜路湖に着く頃にはすっかり晴れ上がった。


    

 湖畔を走っていると「和琴半島」「キャンプ場」の標識が見え、景色が良さそうなところだったので
立ち寄ることにした。屈斜路湖は大きな湖でカヌーもできるみたいだ。キャンプ場は2つあり、その
一つがRECAMP和琴半島といい、最近各地にできているキャンプ場のようで、どんなところか見に
行った。管理棟もしゃれた作りで、少し歩いて湖に出ると、ウッドデッキの展望台があり、屈斜路湖
の美しい景色が見渡せた。


   

 満足して次は美幌峠を目指す。くねくねとした峠を登って「ぐるっとパノラマ展望台」という道の駅
に着き、歩いて展望台まで登るとその名の通り、雄大なパノラマの景色が広がり、感動した。美幌
峠は昔、新婚旅行で通った覚えがあるが、当時は道の駅などはなく、ただ通過しただけのような気
がする。

 その後休憩所でコーヒーを飲みながら、今日の宿泊地を探した。しばらくキャンプをしていないの
で、天気の様子を見ながらいいところはないか探し、阿寒湖畔キャンプ場とRECAMP摩周の2つに
絞り、あとは行って決めることにした。

   

 美幌の町へ向かって走っていると、収穫した後の玉葱畑が広がり、2,3m四方のコンテナのような
カゴにぎっしり玉葱が入ったものが畑のあちこちに置いてある。それを積んだトラックも走っていた。
北海道産の玉葱をよくスーパーで売っているが、こうして遙か離れた中国地方まで運ばれてくるの
かと感心した。


 再び阿寒湖に来て、キャンプ場を見たがイマイチなのでパスし、ここも今朝通った、摩周の町から
少し離れたRECAMP摩周オートキャンプ場にやってきた。バイク専用サイトがあり、車は2,500円な
のに対し、バイクは1,000円という安さ。管理棟や炊事場・トイレからは少し離れているのが難点だ
が、広くて木々に囲まれ素敵なところだ。


 受付を済ませ、焚き火をするために薪を買った。普通は1束500円位なのだが、ここは1本100円
ということで太めの薪を7本買った。


 買い出しをするために結構大きな摩周の町に行くと三角屋根の洒落た摩周駅があり、すぐ横に
足湯があるのを発見。誰もいないので早速裾をまくって入ると丁度いい温度でほっこりと暖まった。


    

 セコマを見つけ夕食と酒を買う。焚き火をするときはウィスキーを買うのだが、小瓶ではいつも足り
ないので普通サイズを買った。


 テントに帰り、ビールで一人乾杯し夕食。他に宿泊客はいない様子で、管理人も朝まではいない
そうだ。この広いキャンプ場を一人で独占する贅沢!

「一人でキャンプして寂しくないの?恐くないの?」とよく言われるが、昔から野宿で慣れているので
ちっともそんなことはない。(昔、寝ていたら野犬の群れにテントを囲まれ、恐かったこともある
が・・・。)


 腹もふくれ、あたりが暗くなってきたので焚き火タイムの始まり。いつもは新聞紙などで小枝など
に火をつけ、少しずつ大きい木にしていくが、それでも着かないときはバーナーで直接木を燃や
す。しかし、ここの木は大きくて湿気ているせいかなかなか火が着かない。そういえば薪を買ったと
き管理人が「薪を割る器具があるので、よかったら使ってください」と言っていたのを思い出し、利用
させて頂いた。刃の上に木を置いて上からハンマーで叩くと2つに割れ、細かくするという原始的な
道具だ。それを使って細かくし、やっと火が着き3時間くらい燃え続けた。焚き火を見ながら、ゆった
りと呑むウィスキーは最高だ。良い加減に酔って就寝。


     

<9/13(水)12日目>RECAMP摩周→釧路→帯広→大樹(たいき)→旅うたり

     

 6時頃起きるとテントは夜露でびっしょりだったが、雨が降った形跡はなかった。曇っているが、雨
雲レーダーを見ると天気は良くなるみたいだ。今日は釧路を経由して帯広に行き、市内の中心部
のビジネスホテルに泊まって、居酒屋で飲み食いするつもりだ。昨年も室蘭市内でそうしたが、ツー
リングの中でたまにはそういう日があってもいいんでないかい?。


 ゆっくりとテントやタープを乾かし、9時過ぎに出発。途中は省略して夕方、帯広に到着。駅に観
光案内所があったので、宿を探すために窓口に行き、手頃なホテルが無いか聞くと、「そういう斡
旋はしておりません。ここに宿のリストがあるので、自分で電話して調べて下さい。」と冷たくA4の
紙を渡された。何じゃ?この不親切な態度は!しかもそのリストには電話番号と住所だけで料金も
載っていない。居酒屋にお金をかけたいので、宿はなるべく安いほうがいいのだ。しかもバイクなの
で理想的には屋根付きの駐車場が望ましい。ちなみに昨年の室蘭の観光案内所では、全てその
条件に合うホテルを電話で問合せして探してくれた。一泊朝食付き4,400円で近くには居酒屋が何
軒かあり、一階がガレージだ。なぜ安いかというと部屋に窓がないからで、そんなの酔って寝るだ
けだから全く問題はない。


 仕方がないのでスマホのネットで一軒一軒チェックし、良さそうな宿に電話するが、大抵満室で、
空いていてもべらぼうに高い。結局一時間ほど探したが見つからず、9/4に泊まったここから近い
「ライダーハウスCafe&Pit」にしようかとも思ったが、あまりいい印象ではなかったので、帯広を離れ
た宿をマップルで探した。すると大樹(たいき)という町の近くに「旅うたり」という、ゲストハウス風の
徒歩宿があり、調べてみると良さそうだったので電話してみると、「えっ、今日ですか?食事の用意
はできないので素泊まりになりますが。」「はい、結構です」と即決定。個室の素泊まりで4800円だ
った。だんだんと暗くなる中、ナビを頼りに宿に向かった。


 9/4に通った大樹の道の駅でトイレ休憩。トイレから出ると同じくらいの年で愛媛から車で来たと
いう男性が話しかけて来た。「わしも前にW800に乗っとったんよ。北海道を旅するんなら、岡本石
油のカードを作ったらええで。すごい安いけえ。」他にもいろいろと話したかったみたいだが、早く宿
に着かないといけないので、「すいません、急ぎますので。」と言ってそこを出た。岡本石油はそれ
まであまり見かけなかったが、最終日、見つけてガソリンを入れると、他は大体リッター170〜180
円くらいだったがそこはなんと152円という驚異の安さだった。岡本石油恐るべし!


 宿はそこから10分ほどで国道から入ると真っ暗で看板もなく、ナビがなければ到底見つからない
ようなところだった。宿に着いても建物は真っ暗でおかしいなと思っていたら、電気がついてオーナ
ーが出て来た。なんでも、虫が凄くて明かりを目指して入ってくるので、なるべく電気をつけないよう
にしているとのこと。


 宿はできてそんなに経ってないようで、ペンション風な作りで部屋もとてもきれいだった。客は私一
人だそうだ。部屋に荷物を運び、先ほどの道の駅の付近に食堂や、コンビニ、スーパーがあるとい
うので買い出しに行った。


 帰ってシャワーを浴び、談話室でオーナーと話をしながら夕食をとった。「うたり」の意味を聞くとア
イヌの言葉で「仲間」という意味らしい。

 彼は独身で、この宿だけでは生活できないので、農家などでアルバイトをしているそうだ。談話室
には見たこともない巨大な薪ストーブと山積みになった薪があり、凄いですねと言うと、冬はこれを
目当てに来る客もいるとのこと。テーブルに「会う旅、とほ宿」という冊子が置いてあったので、見る
と北海道に49、本州に7つ「旅うたり」のような宿が詳しく紹介されていている。昨年、浜頓別(はま
とんべつ)で泊まった「トシカの宿」や美瑛(びえい)の「おかせん里(り)」も載っていた。これは便利
な本だわいと思い440円で買った。

 部屋に戻り、明日と明後日のコースを地図を見ながら考えていたら睡魔に負け、珍しく11時過ぎ
に就寝。


<9/14(木)13日目>  旅うたり→浦河→日高→苫小牧→追分→旅の轍
 翌朝起きると、いつもの習慣で宿周辺のお散歩。昨夜は暗くてよく見えなかったけれど、このあた
りは一面牧草地で朝早くからトラクターが、牧草をぐるぐると巻いたもの(牧草ロールというらしい)を
運んでいた。バイクは大きなガレージに止めさせてもらったので、夜露をしのげた。


      

 朝食をとりながら、オーナーに今日のコースを話し、天気が悪くなりそうなので千歳付近でいい宿
はないかと聞くと、追分というところで彼の友達がやっている「旅の轍」という徒歩宿を紹介してもら
った。今日は雨との戦いになりそうだ。


 オーナーの見送りを受け、豊似(とよに)から襟裳岬の方に行かず、天馬街道という山の中の道
を走る。この道はマップルにガソリンスタンドが一つもないとあったので、念のため豊似で給油。ほ
とんど車の通らない道でスイスイと言いたいところだったが、ところどころ工事中でストップ。街道を
半分くらい走ったところに休憩所があり、旅うたりのオーナーがそこに美味しい湧き水があると言っ
ていたのを思い出し、立ち寄った。その水を飲んでリフレッシュし、山道を下り、海岸線の浦河(うら
かわ)に出た。


    

 浦河から日高にかけては馬、特にサラブレッドなどの競走馬の産地で「馬事資料館」というのがマ
ップルに載っていたので、どんなものかと興味を引かれ寄ってみた。優駿の門という馬のレリーフが
飾ってある門を入ると右手に馬事資料館、正面に郷土資料館がある。競馬好きにはたまらないよう
サラブレッドの名馬の写真・資料や馬の剥製、皇室の馬車などがあり、結構見応えがあったが、驚
いたのはその後入った郷土資料館だ。

 昨年も今年もいろんな場所で郷土の資料館に行ったが、ここの資料館は別格だった。小学校の
廃校を利用したもののようだが、とにかく膨大な数の展示があり、教室ごとに、動物や植物、漁業
や浦河の歴史、それらが種類ごとに整然と並べられ、全部を丁寧に見ると半日はかかりそうだ。教
室には収まりきれず廊下にも展示物が置いてあった。時間があればもっとゆっくり見たいものだと
思った。

    

    

 ここを出て海岸沿いに苫小牧に向うが、心配した通り雨が降り始めた。雨の中、昼時になったの
でマップルに載っていた「ベンチタイム」という店の名物のオムライスを食べに行った。合羽の上を
脱ぎ下はそのままでタンクバッグを持ったまま店に入ると、女性の店員が「ライダーの方ですか?
ライダーの方はミルクが無料サービスになります。」なんと嬉しいサービス。聞くところに寄ると、父
親でここの老店主が昔バイク乗りだったためらしい。デミグラスソースがかかったオムライスも美味
しかったが、食後にこの老店主が趣味で作った木彫りの鳥をプレゼントしてくれた。来て良かった!

    

 店を出て再び合羽を着て走り出すと、雨はますます激しくなり、全く止む気配がない。今回の旅で
一番の豪雨だ。途中広い駐車場があり、そこに小さな東屋があったので雨宿りをしようと入った
が、風が強く雨が横から吹きつけて雨宿りの意味がない。ふと見ると、近くに食堂兼土産物屋のよ
うな店があり、準備中の札がかかっていたのでこれ幸いと行ってみると、ちょうど入り口の前に避難
できるスペースがあり、誰もいないようなので使わせてもらうことにした。

 雨雲レーダーを見ると当分止みそうにない。宿には連絡してあるので少々遅くなっても大丈夫だ。
しばらく雨が弱まるのを待とうと思っていたら・・・

 

 一台の軽自動車が店の前に止まり、バイクをどけろと手で合図した。そう、店の人が帰ってきた
のだ。泣く泣くびしょ濡れの合羽を着て再び走り出した。苫小牧を抜け、ナビを頼りに夕方頃、追分
の「旅の轍」に着くとオーナーが「大変でしたね」と、バスタオルを持って出迎えてくれた。玄関の前
に雨具を干すスペースがあり、助かる。

 部屋で着替えて下の談話室に行くと、鉄道おたくのオーナーが集めた、鉄道に関する看板や行き
先のプレートなど、鉄道マニアにはたまらないであろうものにあふれていた。(私にとっては猫に小
判だが・・・。)ここは基本的に食事は朝食のみで、近くに店が無いためオーナーが車で10kmほど
離れた千歳の町のスーパーと温泉に連れて行ってくれるそうだ。

 温泉から帰り、夕食をとりながら奈良から夫婦で移住したというオーナーと話していると、沢山の
鉄道のグッズが気になり、「どうやってこれらを集めたんですか?」と聞いた。すると「多くはネットオ
ークションです。実は今、競(せ)っているのがあって・・・。あ、すいません。」と言ってスマホを操作
している。「うぁ、また値段が上がった!」話の最中にこのようなことが何度かあり、あきれて部屋に
戻って早々に寝た。