北海道ツーリングC 

7月27日(水)〜28日(木) 【美瑛→富良野→日高沙流川→二風谷→苫小牧→室蘭】
<7/27(水)9日目>美瑛→富良野→日高沙流川(ひだかさるかわ)
 美瑛は見どころが沢山ありそうなので宿を早めに出発し、地図を見ながら走るが、道が入り組んでいて結構迷ってしまい、目的地に辿り着けないことが多かった。その途中で偶然「拓真館」という建物を見つけて入ったが、ここが大当たりだった。前田真三という美瑛の景色に惚れ込み移り住んだ写真家の作品を展示しているのだが、四季ぞれぞれの景色を写した一枚一枚の写真はどれもとても美しく本当に感動した。絵葉書を買い、余韻の冷めやらぬまま外に出ると白樺に覆われた林の中に散策できる小径があり、そこを歩いても心が癒された。
       

 そのあとは「青い池」という、まさにそのまんまの名前の池を目指す。写真を見るととても神秘的な深い青い色の池で是非行ってみたかった所である。少し美瑛から離れたところにあったが、着いてみると人気のスポットらしく、すごい人出だった。駐車場にバイクをとめ、人の流れにそって池の周りを歩きながら何枚か写真を撮った。思ったよりは青くはなく少し緑がかっていたが、日によって違うらしい。あとで調べると、川から流れてくるアルミニウムなどの鉱物と池の地下水が混ざってこのような色になるそうだ。

 満足して駐車場に戻ると私のバイクの隣に同じ格好で色違いのカブが2台入ってきた。若くて可愛い姉ちゃん達だったので、早速「どちらから来られたんですか?」と声をかけた。二人は友達で一人は北海道在住、もう一人は本州(どこか忘れた)で、ツーリングをしていると言っていた。

         

 美瑛を出ると、次はラベンダーで有名な富良野を目指す。よく北海道の写真で一面の紫色をしたラベンダー畑を見るが、マップを見るとそのようなスポットが沢山あるらしい。富良野に入るとそのようなラベンダー畑があちこちに現れるが、どこに行こうかと迷う。上富良野にあるファーム富田というのが有名らしかったが、その先にもっといいところがあるかもしれないとスルーして中富良野町に入ると、右手の山にスキー場のリフトがあり、斜面にラベンダー畑が見えた。よし、ここにしようと入り、リフトのチケットを買って山頂に向かう。リフトに乗るのは昔スキーをしていた時以来かも。登りながら見ると、同じラベンダーでもいろんな種類のものが植えてあり、その境目には赤や白のサルビアがいいアクセントになっていた。頂上からの景色も良かったが、ラベンダーの色が時期を過ぎていたのか、少し色あせていて期待ほどではなかったが、写真を撮りまくった。
 スキー場が流行らなくなったのでラベンダー畑にしたのかとの疑問がわいたので、リフトを降りるとき係員に聞くと、冬はこのままスキー場になるということだった。なるほど一石二鳥のいい考えだ。

       

 次は今日のキャンプ地に向かうが、候補地は2つ。一つは「かなやま湖畔オートキャンプ場」、もう一つはずっと先の日高峠を越えたところにある「日高沙流川キャンプ場」だが、時間的にちょうどいい、二つ目にする。しかし一応一つ目も見ておくことにする。キャンプ場は予約なしでも着いてから、見て決めることができるので、選択の幅が広がる。

 昼時を過ぎ腹が減ってきたので店を探していたら、山辺という少し大きな町で定食と書かれた看板の店を見つけ入ることにする。駐車場にはツーリングらしいバイクがとまっていた。小さな店の中に入るとカウンターにバイクの男性が座って定食らしきものを食べていた。結構美味しそうだったので同じ定食にしようかと思ったが、カウンターの上の黒板を見ると、いろんな定食メニューの中に「本日のみ、鰻丼定食1,600円」と書いてあり、「おっ安い!よし鰻で精をつけるか」と思ったのが間違いだった。カウンター越しに厨房が見えるのだが、プロレスラーのようなでっかい店主のおっさんがレンジで鰻をチンしてるのだが、かなり時間がかかっているのでおそらく冷凍ものだろう。だいぶ待たされて出てきたのは想像をはるかに越えていた。悪い方に・・・。私は上品で小ぶりなどんぶりに鰻が4〜5切れ乗っているのを想像していたが、ここが和食の専門店ではなく田舎の大衆食堂であることを忘れていた。出てきたのは、バカでかいどんぶりにはみ出るほどのでかい肉厚の鰻。おそらく値段からして中国産であろう。食べてみると大味で油っこく、途中で気持ち悪くなり全部は食べられなかった。

 気を取り直してかなやま湖畔のキャンプ場を目指すが、山の中に入ると少しずつ天気が怪しくなってきた。この湖畔の先には高倉健と広末涼子が出た映画「鉄道員」のロケ地で駅やロケセットが残っていて是非行きたかったところだが、雨がポツポツしてきたのとロケ地まではかなり距離があったので、諦めて次の沙流川キャンプ場に向かう。このキャンプ場の近くには「樹海ロード日高」という道の駅がある。1時間くらい走って道の駅に着いたので、簡単にキャンプ場に行けると思ったが、なぜかそのあたりを走っても着かない。もう一度道の駅に戻り、地図やナビで確かめたりしてようやくキャンプ場に辿り着いた。やはり私は典型的な方向音痴であることを自覚した。

 キャンプ場はとてもきれいで広く、フリーサイトやオートキャンプ場などいろんな種類のサイトやロッジまである。管理棟に行く前にざっと様子を見るため、場内をバイクでゆっくり偵察する。まだ時間が15時頃だったため客も少なく、車での家族連れが何組かいた。フリーサイトもほとんど人がいないので、管理棟に行って500円(北海道のキャンプ場はどこも安い!)を払い、目を付けた場所にテントの設営をした。バイクは美深と同じく乗り入れてもよいので助かる。車はダメなのでオートキャンプ場を使ってるみたいだった。

 設営を終えたころからバイクが次々とやってきてテントを張り始めたが、とにかく広いので十分余裕がある。しかし今回の旅あるあるで、すぐ近くにまた一台のハーレーが来て若い男が設営を始めた。他に空いている場所はいくらでもあるのになぜ近くに来るんだ?俺のテントはハーレーを呼び寄せる魔力があるのだろうか?。しかし、向こうから挨拶してきたので許してやることにした。
 近くに温泉施設があるので、道路を隔てて沙流川に架かる橋を渡って入浴しに行く。北海道のキャンプ場の多くは近くに温泉があるのでとても快適でありがたいことだ。さっぱりとして風呂から出てみると驚いた。来るときは晴天だったのに外はなんと土砂降り。キャンプ場から来た家族連れも出るに出られずロビーで雨の止むのを待っている。30分くらいたつと少し雨があがって来たので外に出て、道の駅に隣接したスーパーへ買出しに出かける。また雨が降ってもいいようにタープをしっかりと張り、夕食タイム。着るものが結構濡れていて気持ち悪かったが、酔いに任せて就寝した。
   

<7/28(木)10日目>日高沙流川→二風谷(にぶたに)→苫小牧(とまこまい)→室蘭
 朝起きると、最初は曇っていたがだんだんと朝日が差し込み、いい天気になってきた。タープとポールは3年前の山陰ツーリングから使い始めたが、最初は上手く立てられず苦労した。しかしこれも慣れで、何度か使ううちに木やバイクを利用して短時間で立てられるようになった。
 昨日の雨で濡れていたものをロープにかけて乾かす。衣類やテント、タープも全て乾くのを待って撤収にかかる。キャンプをしていて撤収の時に雨が降っていると本当に心が折れるが、幸いにして今回の旅ではそういうことはなかった。

 キャンプ場を出て苫小牧に向かっていると「二風谷アイヌ文化博物館」という看板が立っていた。北海道に来たからにはこれは外せないと思い、入館する。最近できたような大きくきれいな建物で、中に入ると膨大なアイヌの文化に関する展示があふれていた。詳しく見ていたら何時間もかかりそうなので、30分くらいでざっと見て回る。楽器の展示を期待していたが、ほとんどないのは残念だった。
 この建物を出て道路を挟んだ反対側に「萱野茂 二風谷アイヌ資料館」というのがあり、共通券を買っていたので、そちらも見に行く。建物も古く、場所が離れているので他に見学者もおらず、受付にも誰もいない。勝手に入って見学した。萱野茂はここで生まれたアイヌの人で、学者となり、業績を残した人である。世界各地を回り、いろんな種類の民具や写真が展示してあった。出るとき、受付に小さな封筒に入ったカードをお取りくださいと書いてあったので、1枚もらい後で開けたらアイヌの口琴のムックリの写真が入っていてちょっぴり嬉しかった。ムックリは実際に持っているが、いろんな世界中の口琴の中でも上手く音を出すのが難しい楽器である。

 苫小牧で昼になったので、道の駅で名物のカレーラーメンを食べる。だが普通にカレー味のラーメンだった。名物に上手いものはなし、残念!。苫小牧を北上し、支笏湖を観光して宿泊することも考えたが、いい宿が見つからなかったので、パスして室蘭に向かう。2時間くらい走って室蘭の中心部に到着。かなり大きな町だが、港を囲むように道路が複雑に走っており、結構迷う。

 室蘭駅の近くに観光案内所があったので、宿を探してもらう。この案内所は昔の室蘭駅の駅舎を復元したもので、これも後に六角精児の呑み鉄の番組で出てきて懐かしかった。港まつりの時期なので空きが少ないらしい。北海道に来てから一度も呑み屋に行ってないので、宿はできるだけ安いものにしてその分飲食に回す方針を案内所の人に伝えると、一番安いのが室蘭ユースホステルで食事別3900円、次に安いのが市中心部にあるビジネスホテル「ミリオン」。こちらは朝食付きで4400円。ただし、安いわけは部屋に窓がないからだそうだ。さすがに今まで宿泊したホテルで窓がないというのは経験がなかった。ユースは部屋から見える海の景色が絶景らしいので、そちらに予約の電話を入れると夕食、朝食共にやってなくて、外で食べてほしいとのこと。ちなみに場所は海岸の高台にあり、近くには店はない。考えた挙句、その後ユースはキャンセルしてミリオンに予約を入れる。案内所で市中心部の地図をもらったが、ミリオンの近くには飲食店が何軒かある。酔って寝るだけなんだから、別に窓がなくったっていいじゃないか、と割り切る。しかも嬉しいことにバイクで行くことを言うと、屋内の駐車場にバイクが置けるという。雨や盗難のことを考えるとこれはメリットが大きい。

 宿の心配がなくなったので、早速室蘭観光。まずは白鳥大橋というその名の通り白くて巨大な橋で室蘭湾を渡り、海沿いに西へ走り製鉄所を見に行く。室蘭といえば製鉄。まあ地元のJFE(日本鋼管)とよく似た景色だった。引き返してもう一度白鳥大橋を渡り、絶景スポットの地球岬に向かう。ただし本当の表記はアイヌ語に由来する「ちきう岬」なのだそうだ。
 駐車場に着くと、隣にボロボロの50ccのカブでツーリングしている若くて腹の出たTシャツ兄ちゃんが来て話しかけてきた。以前は北海道に住んでいたが、今は東北にいて全国の岬をカブで回っているそうだ。少しオタクっぽいがニコニコと愛想がよく、害はなさそうなので一緒に階段を上がって展望台にあがる。天気も良く素晴らし眺めに感動。水平線が丸く見えると案内に書いてあったが、どう見ても一直線だった。兄ちゃんにそのことを言うと、「北海道の岬はたいていそう言ってますよね」だと。自分のおんぼろカブ(○○君と読んでいた)のことや今までにいろんな岬を回っていて、ここは良かった、あそこは大したことはなかったなど、次から次へと話しかけてくる。海と灯台をバックに彼に写真を撮ってもらい、「撮りましょうか?」というと、宗谷岬で会った兄ちゃんと同じく固辞された。今夜どこに泊まるのかと聞くと、なんと私がキャンセルしたユースに泊まるとのこと。キャンセルして良かったと内心ホッとする。
    

 日も傾いてきたので、今日の宿「ミリオン」に向かう。結構古いビジネスホテルで、一階の駐車場にバイクを止める。薄暗い階段をあがって2階の受付に行くと、廊下には宿泊客が置いていった漫画本が山のように積んである。受付を済ますと、鍵とともに「これはプレゼントです。」とシュークリームをくれたのにはびっくりした。ウェルカムドリンクというのは聞いたことがあるが、シュークリームとは。部屋は確かに窓がなかったが、そんなには気にならない。
 シャワーを浴びて早速飲みに出かける。港まつりの最中らしく、街中にはスピーカーから演歌っぽい曲が流れているが、人通りはそんなにない、というかそもそも人が歩いていない。夕方なのに店はほとんど閉まっていて、居酒屋があるのか心配になってくる。観光案内所でもらった地図を頼りに歩いていると何軒か見つけた。最初の店は人気の店らしく、人が多く満席のようだったのでパス。あと3軒くらいあったがこれはという店がなく、そろそろ歩き疲れた頃、割と大きな店が目に入った。

 中は見えなかったが、表のメニューに値段が書いてあり、良心的な店だろうと思ってここに決めた。メニューには焼き鳥があって、北海道では焼き鳥とは豚の串を指すと聞いていたので確かめたかったのと、さらにジンギスカンもあって、これは外せないと思い店の戸を開けた。中に入るとだだっ広い店内の奥に客は若い男が一人だけ。カウンターに座ろうと思ったら、新聞やいろんなものが乱雑に置かれて、仕方なく座敷に上がる。老夫婦がやっていて、婆さんは客の男とずっと話をしていて、注文を聞きにも来ない。完全なる失敗だった。やっと婆さんが来たので、生ビールと豚串とジンギスカンを注文し、途中から普通の焼き鳥を頼み日本酒に切り替える。味は悪くはなかったが客はたった2人なのにえらく時間がかかる。店の主人はずっとテレビを見ていて、話しかける雰囲気ではなく、一人黙々と酒と料理を消化し早々に店を出た。やはり旅先では、店の人や隣り合わせた客との会話が楽しみなのに、全く期待外れだった。最初に見つけたにぎやかな店に待ってでも入るべきだったと後悔する。ホテルに帰ってTVを見ながら飲み直した。