北海道ツーリングD 


7月29日(金)〜30日(土) 【室蘭→函館→ニセコ高原】
<7/29(金)11日目>室蘭→函館
 7時起床。普段ならカーテンを開けて外の景色を眺めるのだが、生憎窓はない。廊下に出ると突き当りが道路に面していて、そこから見下ろすと通勤・通学している人々がせわしなく行き交っている。「諸君今日も一日頑張り給え」と心の中でエールを送り、朝食会場に行く。あまり期待していなかったが、結構種類の多いバイキングで味もそこそこ。ついご飯をお代わりしてしまった。

 室蘭から函館までは約200kmと結構距離があるので高速を使おうかとも考えたが、今回の旅の目標の一つ、ゆっくりと走るため一般道を使う。ただし、函館は見どころが多いので昼過ぎには着きたい。

 途中、「噴火湾パノラマパーク」という大きな道の駅で休憩する。少し高台にあり、噴火湾(内浦湾)を見下ろすその名の通りパノラマの景色が楽しめるところだった。人も多く、なぜか犬を連れた家族が多かった。「白い恋人ソフトクリーム」というのが名物らしかったので2種類のチョコレート味を食べたが、味はまあまあだった。

 ここで今日の宿をネットで探す。宿の予約サイトで見つけた「クレセントホテル函館」というのが町中にあり、室蘭の「ミリオン」とは対照的な洒落た感じのホテルでしかも朝食付きで4600円と安い。すぐさま予約を入れて、前からずっと行ってみたかった五稜郭に向かう。

 五稜郭は意外にも町の中心部にあり、まずは上から一望できる五稜郭タワーに登る。展望台からは全景が見渡され、想像したより五稜郭は大きかった。土方歳三を始め歴史の解説なども紹介されていて興味深かった。一階に降りると売店があって、夜の酒のつまみを買う。その後五稜郭に行くが、人は多くて暑いし、30分ほど歩いて次の目的地函館山周辺に向かう。函館山の夜景は外せないので、明るいうちに事前にロープウエイの乗り場などをチェックした。そのあたりは歴史的な建造物が多く、中でも旧函館区公会堂は圧巻だった。百年以上も前にこのような豪華な洋館が出来ていたのはすごい。外観も素晴らしかったが、中のいろんな部屋も西洋風で良かった。大広間のステージにピアノがあったので、掃除をしているおばさんに「ここでコンサートなど行われるんですか?」と聞くと、迷惑そうに「知りませんよ」と言われた。

    

    

 近くに有名らしい大きな教会があったが、残念ながら改装中で中には入れなかった。ロープウエイの乗り場と駐車場の場所を確かめ、そのまま予約した宿に向かう。競馬場のすぐ近くなので競馬場を目当てに行けばすぐ見つかると思ったが、その競馬場がなかなか見つからない。仕方なく携帯のナビを使うがそれでも見つからず、変な路地に誘導されたり30分くらい奮闘してやっと辿り着く。これまでもよくあったが結構役に立たないぞ、このヤフーのカーナビは!

 着いてみれば、大きな通りに面していてしかも正面にはちゃんと競馬場がある。なんでこんな分かりやすいところがすぐに見つからないというのは、ナビのせいだけではなく、やはり方向音痴としか言いようがない。
 クレセントホテル函館は昨日の窓なしミリオンとは全く対照的だった。モダンでおしゃれで洗練されていて、廊下には絵やリトグラフなどの額が沢山飾ってあり、部屋もきれいで素晴らしい。これがたった400円の差とは信じられない。(実際はもっと高いらしい。)フロントで函館山の夜景を見に行きたいのだが、いつ頃行くのがいいかと聞いたら、とにかく人が多いので日が暮れる前に早めにロープウエイで山頂に上がるのがよいとのこと。洗濯もしたいのでコインランドリーはあるのかと聞くと、館内にはなく、ホテルに隣接したコインランドリーがあるのでそちらを利用してくれと言われ、早速洗濯物を持って行く。しかし、そこは町なかにある普通の大きなコインランドリーで、大容量の洗濯機に少量の洗濯物を入れるのはもったいないが仕方がない。時間がないので乾燥は10分くらいで出したら、十分に乾いてなく、明朝もう一度することにした。

 日が暮れてきたので急いで函館山に向かう。函館を訪れた目的の一つは五稜郭だったが、もう一つは昔見て感動した映画「海炭市叙景」の舞台だったからだ。その中にロープウエイや市街電車が出てくるが、映画の内容や季節が冬だったこともあって、函館は寂しくモノトーンのようなイメージがあったが、実際に来てみると明るく町全体が活気ある雰囲気だった。

 ロープウエイの乗り場に着くと、まだ日は暮れていなのに人があふれていた。1500円を払って15分おきに出る大きなゴンドラに乗り、頂上に着いたらそこも人だらけだった。まだ夜景には早いので、函館を紹介するビデオを見せる小さなシアターがあったので100円を払って入ると、客は私一人だけ。期待はしていなかったが、函館の魅力を美しい画像でつづっていてなかなか良かった。

 だいぶ暗くなったので展望台に上がる。結構広いのだが夜景が良く見えるスポットは人が殺到していて写真が上手く撮れない。皆スマホを高くかざして、何とか夜景を撮ろうと必死である。私もできるだけ前の方で撮ろうと辛抱強く待っていた。しかし、一番前にいる家族連れの母親らしき女がなかなか動かない。スマホの設定を変えているのか、何度も撮っている。その女の周りは写真を撮ると気を遣って後ろと交代しているのだが、一向にお構いなしである。私も含めその後ろにいる人たちのイライラがだんだんつのり、ついに私の堪忍袋の緒が切れてしまった。「すいません。後ろがずっとつかえているので、交代してもらえませんか?」と怒りをこらえて優しく言ったのだが、その女はなんと私にこう言い返したのだ。「私だって1時間前から並んでやっとこの場所をとったのよ!」その後しぶしぶ引き下がって私は最前列で絶景の夜景を取ることができたが、この女のせいでずっと気分がよくなかった。

    

 函館山を降りて、宿に向かう。来た道を帰るだけなので楽勝のはずだったが、夜の景色は昼間とは違い、情けないことにまた迷ってしまった。コンビニで酒とつまみを買い、やっと宿にたどり着きシャワーを浴びて乾杯。

<7/30(土)12日目>函館→ ニセコ高原
 このホテルは何もかもが良かったが、朝食のバイキングも質が高かった。そんなに種類が多いわけではないが、和洋のバランスもよく、味も良かった。一日の始まりの食事が充実していたら、とても力が湧いてくる。昼を抜いてもいいようにたっぷりといただいた。昨日、乾燥が不十分だった衣類をコインランドリーに持っていく。わずかな洗濯物なのに、昨日と合わせ1000円かかってしまった。

 函館は見るべきところがあ沢山あるのだが今日はかなりの距離を走るので、自由市場だけ覗いてみる。朝から観光客であふれ、いろんな店が客を呼び込もうと声をかけている。やはり海産物が豊富で値段も安い。買おうと思ったが店が多くて迷ってしまう。呼び込みの勢いに負けて入った店が、5種類の魚介類を選んでクール便込みで8000円というのでそれに決める。近くに夕張メロンのカットを売っているところがあったので食べたら美味しかった。

    

 ホテルが2日続いたので、おそらく最後になるであろう宿泊はキャンプで締めることにした。ネットで調べたら、ニセコ駅の北にある曽我森林公園キャンプ場が近くに温泉もあって評判が良かったのでとりあえずそこを目指す。来たときと同じ道を走るのは面白くないので、北海道では初めての高速を使うことにする。道央高速道に入ってすぐにパトカーに捕まっている車を発見。私のバイクはせいぜい100kmくらいしか出ないのでその点は安心である。高速は長万部までは海沿いの国道5号線と平行に走っているが、少し山の中に入っているため、時折海が見えるもののあまり景色はよくない。長万部を過ぎ、黒松内のインターを降り5号線を走るがここからニセコまでが長かった。

 休憩をとりながら2時過ぎにやっとニセコ駅に到着。駅前には大きな温泉施設がある。長距離を走って疲れていたので温泉があると単純に嬉しい。駅舎に観光案内所の幟があったので、中に入ると案内所には似つかわしくないヒッピー風(例えが古い)の兄ちゃんがいて、曽我公園キャンプ場の場所を聞いた。早速行ってみると、誰もいないのでおかしいなと思ったら「コロナのために休園します」の張り紙があるではないか。「案内所ならそれくらい把握しとかんかい!」、と怒りつつ駅舎に戻り、他にキャンプ場が無いかと尋ねた。するとその公園のちょっと先に「リバーサイドヒルキャンプ場」という洒落た名前の私設のキャンプ場があるので簡単な地図を書いてもらい、そこに行く。しかし、地図の通りに行ってもそれらしきものはなく、いくら探しても見つからないので再び案内所に戻り、詳しく聞くと細い道があってそこから入るらしい。今度は注意しながらゆっくり探すとそれらしい細い道があり、小さい看板が立っていてようやく見つけることができた。

 管理棟に行くと不在で、受付に書いてあった携帯番号に電話すると隣の建物から不愛想な管理人のおっさんが出てきた。このキャンプ場は彼が一人で作ったそうだ。まだできてそんなに経ってないようでロッジは新しそうだった。サイトはそんなに広くはないが、好きな所を使ってよいとのこと。ただしゴミは全て持ち帰るようにと言われた。2,3組の車の客がいて焚き火をしていたが離れているので気にならない。白樺の木立の間にテントとタープを立てる。
 まだ日は高く時間があったので、バイクに乗って、あたりの散策に出かけた。遠くに日本百名山に数えられる羊蹄山が見え、高原らしく爽やかな道は走っていて楽しい。すると途中、きれいな公園のようなところにメルヘンチックな塔が建っているのが見えたので何かと思い寄ってみた。ここは有島記念館といって「生まれ出ずる悩み」などで知られる作家の有島武郎の記念館だった。作家にはあまり興味は無かったが、建物がモダンで洗練されていたのと、中で本を読みながらコーヒーが飲めるので入ることにした。中は予想した通り、センスあふれる空間でとても落ち着く。大きな窓から見える庭園も美しく、急な階段を登って塔の上に出ると風景が一望でき、見飽きなかった。客は誰もおらず、久しぶりにゆっくりと北海道に関する本を読みながら美味しいコーヒーを味わった。偶然見つけて立ち寄ったが、ラッキーな出会いだった。

    

 一旦テントに戻り、温泉に行く支度をしていると3台の中型バイクに乗った中年の男たちがやって来て近くに荷物を下し始めた。どうやらロッジに泊まるらしい。距離は20mくらい。騒がなければよいが、と祈りつつ温泉に出かける。
 キャプ場の近くにある温泉は、なぜか申し合わせたように料金が500円の所が多い。さっぱりした後、先ほど探しておいたAコープというスーパーで夕食と酒の買出し。ゴミをなるべく出さないように、ビール1缶と日本酒の1合紙パックを4個買う。焚き火でゴミを全て燃やす作戦だが、これは美深のキャンプ場で関西のおっさんに教わったやり方だ。帰ると管理棟で薪を1把500円で買う。

 日も暮れかかり、夕食タイム。3人組も火を焚いて宴会をしているが、そんなに騒がしくないので助かった。まずはホタテの天ぷら(練り物)をつまみにビールで乾杯する。そして焚き火台を出して火を着け、フライパンで野菜とベーコンを炒め、鍋でレトルトのもつ煮込みを温める。このお湯は後で日本酒のパックを温めるのにも使う。煮卵もあるので結構充実した夕食だった。その後、焚き火をしながらアルミ缶を含め全て燃やしてゴミを処理し、薪も全て使い果たした。

    



北海道ツーリングEに続く